店長からお客様への挨拶
「北欧、暮らしの道具店」にご来店くださりありがとうございます。店長の佐藤です。
当店は「フィットする暮らし、つくろう」というコンセプトを掲げ、2007年9月18日にインターネット上でひっそりと産声をあげました。
フィットする暮らし。
それを私たちは「ほかの誰かではなく、自分のモノサシで満足できる暮らし」であると考えています。
あの人みたいな暮らしでも、すてきな暮らしでも丁寧な暮らしでもなく、自分にだけは実感できる着心地のいいシャツのような「自分のモノサシで満足できる暮らし」を誰より私たち自身が切実に探していたからこそ、こんなお店をつくることに至ったのではないかとさえ思っています。
もしそんな私たちと同じような人がいらっしゃるとすれば、そんな人たちと一緒に「フィットする暮らし」をつくっていくことに役立ちそうな暮らしの道具や実際的な生活のアイデア、生き方におけるユニークな視点を見つけていく。
それが私たちがお店の運営を通して何よりしていきたいと心から願っていることです。
「そうか、こんなモノがあったか!」
「そうそう、こういうモノが自分にはちょうどいいって思ってた」
「こういう方法も、こんな考え方もあったか!」
「これならば、自分も楽しんで無理なく暮らしに取り入れられそう」
「自分の暮らしって、なんだかまだまだ良くなりそう」
「ところで、わたしのフィットってなんだろう?」
当店に並ぶ商品やあらゆるコンテンツに触れるお客さまが、こんなことを感じたり考えたりしてくださるきっかけになれたら。
そんなお買い物体験や読後・視聴体験を味わっていただきたいと願いながら、今日もスタッフとともにお店づくりに奮闘しています。
なぜ「北欧、暮らしの道具店」なのか?
開店のきっかけは創業者である私たち(兄・クラシコム代表の青木とその妹である私)がスウェーデンを旅し、北欧で出会ったライフスタイルにインスパイアされるという体験をしたことにあります。
旅したときに得た感覚を今でも鮮明に思い出すことができますが、例えるならそれは静かな水面に小石が落ち波紋が広がっていくようなものでした。
旅先で私たちが接した人たちは、朝早くに会社へいき、夕方6時にもなると家に帰ってきて家族で食卓を囲んでいました。
夕飯に招かれたお宅ではスタイルではなく、ただただ「ふつう」のこととして家のあちこちにキャンドルの灯りをともし、窓辺はカーテンをせずに飾りつけを楽しんでいました。
そして好きなモノを、やはり「〜スタイル」というカテゴリーで考えるのではなく、自分らしく生活のなかで使い楽しんでいるように見えました。
お茶の時間に、スティグ・リンドベリのBerså(ベルサ)のティーカップに注がれた中国茶が振る舞われたのですが、そのお茶は日本の南部鉄器で淹れられたものだったんですね。
この絶妙な「その人ならでは」の暮らし方が今も忘れられません。
北欧に「理想」を見たというよりも、北欧で触れることができた暮らし方や働き方の一部を今の自分たちの暮らしに取り入れてみたらどんなユニークなことが起きるんだろうという、その「可能性」に対する好奇心が心の中で波紋のように広がっていったのだと思います。
そんな好奇心に駆り立てられた私たちがまず最初にしたことは、北欧で買い付けてきたヴィンテージ雑貨を販売するネットショップをつくることでした。
私たちが受けたインスパイアを、北欧で見つけた雑貨にのせて誰かにシェアしたいと願うようになるのはとても自然な流れでした。
それが「北欧、暮らしの道具店」の開店当初の姿です。
開店当初から変わらないこと。変わっていくこと。
「フィットする暮らし、つくろう」。
北欧のライフスタイルに影響を受けたことで、これから先の自分たちの軸に置いてみたいと思ったのが、この感覚でした。
だからこそ、スティグ・リンドベリやリサ・ラーソンといった名だたるデザイナーたちが残した器のとなりに、蚤の市で買い付けてきたカゴや花瓶やホーローのお鍋なども並べて、自分のモノサシで「これがあったら暮らしが楽しくなりそう」と純粋にワクワクするものを同じ価値があるものとして紹介し、名がある作品も無名のものもすべて「暮らしの道具」として使ってほしいというコンセプトでネットショップを営むことにしました。
当初はヴィンテージ雑貨のみの取り扱いでしたが、その後、お店で紹介するものの幅は徐々に広がり、カタチも少しずつ変わっていきました。
現在では北欧のものにとどまらず、北欧以外の国のもの、日本のものも多く扱っています。雑貨にとどまらず、アパレル関連のものも多く扱うようになりました。
また自分たちの「こんなものが欲しい」を突き詰めていった先に、オリジナルで日用品や服・コスメをつくり紹介するようにもなっています。
毎日サイトを訪れてくださるお客さまにお買い物以外でも楽しんでいただきたいと、日々更新される読みものや、映像コンテンツ(ドキュメンタリー、ドラマ、映画)、ラジオなどの音声コンテンツもお届けするようにもなりました。
私たちが開店当初から何より大切にしてきたのは「フィットする暮らし、つくろう」というコンセプトなので、その立てている旗には今も変化はありません。
「私たち」のような「誰か」がフィットする暮らしをつくるために、そのサポートとなる手段として、長い年月のなかで自分たちの好奇心や情熱の向くままに幅を広げ種類を増やしてきたことは、ごく自然な変化であるとも感じています。
「北欧、暮らしの道具店」の個性は、北欧との出会いに出発点があるということ、そしてその出会いから生まれた「フィットする暮らし、つくろう」というコンセプトを変わらず追いかけ続けてきたことに宿っているのかもしれません。
これからもそんな個性をもった当店と接してくださるお客さまが、ご自身のフィットする暮らしづくりのために「欲しいもの」「使ってみたいもの」「試してみたいこと」「考えてみたいこと」を見つけてくださることを心から願っています。
北欧、暮らしの道具店
店長 佐藤友子
【写真】鍵岡龍門(2、3枚目を除く)